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2021-08-21ホテル&温泉旅館

三香温泉(北海道・屈斜路湖畔の秘湯)|トロリとした湯の感触

今回は以前の同じ時期に行った、北海道のこの秘湯を取り上げてみよう。
「超マイナー」な温泉だけど、その出会いから、印象、皮膚感、そしてシチュエイション、とてもメモリアルだったので、今でもくっきりと脳裏に焼き付いているのです。

 

「犬が歩けば棒に当たる。日本を歩けば温泉に当たる」っていうぐらいの、驚くべき湯の国JAPAN!
僕もご他聞に漏れず、大の温泉好き。中でも、とりわけ露天風呂が♪

 

満月近くのその日、屈斜路湖畔を車で流していた。日暮には美幌峠まで登り、この湖ごしの「月の出」を見たい!
その為にも早めに宿を確保しておきたかった。でも「いいな」と思う所が、ことごとく満室であったり休業中であったりで、内心ややあせっていたのだ。。

 

この時は、宿は行った先で決める「流れ旅」の渦中。
その時ふと、「大露天風呂」の手創りの小さな木の看板が目に入った。 『!』と勘が鋭く働いた。『行ってみよう!』

 


そこは「三香温泉」という、崩れかかったような1軒の温泉宿だった。4~5人程のご婦人達が、何やら入口にたむろしている。一目で地元の人達。
聞いてみると、 ご主人が今外出しているので待っているとの事。

 

地元の人達が、日帰り入浴で利用する秘湯…。『!!』。再度心の中で何かが閃いた!『よしっ、ここにしてみよう!』

 


ほどなくして主人が現れ、泊まりたい旨を伝えると、『あーっ、いいですよ』と。『では宿帳に名前を』。

 

……ふとロビーに置いてある本が目に入った。「北海道の隠れ場47選」とある。パラパラとめくってみると、なんとこの三香温泉が紹介されているではないか!

 

旅はこうじゃなきゃ、ねっ☆[゜ー^]

 


ロビー以上に崩れかかった小屋を通り、風呂を眺めた。

 


第一印象は、「釣り堀」のように無骨な(笑)

 


ほんと今にもニジマスが跳ねそうだった(爆)

 


そして、ずっしりとした土の香りが充満していた。 今日の泊まり客は、僕しかいないとの事。実際4部屋しかない、小さな小さな宿だった。

 

ひとっ風呂浴びたいところだったけど、もう時間がない…。そしてすぐに美幌峠に向かったのだった。

 


この日は十六夜。やはりこの峠からの眺めは絶品!

 


日がたっぷりと暮れかかった頃、東から月が昇ってきた。

 


その刻々と移り変わるシーンに酔い、目に焼き付けながら帰路に着いた。

 


体はキンキンに冷え切っている。8月の終わりの北海道の山の上は、想像以上に寒かった…。

 


そして宿に着くなり、まっしぐらに温泉に向かい、

 


まるで冷凍食品を解凍するかのごとく、静かに湯に浸かった。。

 


『!!!』ん~、悪くない!…………ふ~っ、これぞ露天!、これぞ秘湯!♪

 

体をゆっくりと伸ばしていく。あたりは深い闇。聞こえるのは湯の流れる音と、鳥のつぶやきだけ。天上には星が一つ二つ…。トロリとした湯の感触が、たまらなくいい!

 

「潜伏」だった。 。

 


ここ三香温泉を目当てにわざわざ来る客もいるだろうが、この「たまたま辿り着いた流れ感」と、「ハードな一日の中での束の間の安堵感」。これこそが旅の醍醐味!

 

夕暮れから夜までずっと「月」を見る為に、夕食は頼んでいない。なかなかハードな旅だ。部屋はこれ以上粗末な空間はないだろうと思う程だけど、これはこれでね^^

 

そして明日からの旅の計画を練り直し、さてちょっと外で一服してこようと。。
ふっと、山小屋のようなロビーに入ったとたん、その何とも言えないシーンと出会ったのだった!

 


暗い中にある僅かな明り。月光のような、とても内照的な光だった。

 

脱サラしたご主人が、一代で築いたというこの三香温泉。その歴史の小物一つ一つが、呼吸するように置かれている部屋…。
そして隅っこのスピーカーから、静かに、そして優しく包み込むようにBGMが流れていたのだ。

 

クラプトンの「ティアーズ・オブ・ヘブン」……。 『!!!』…………完結していた。時間も空間も、現象も概念も、何もかもが!
この朽ち果てたような温泉宿に、この曲が限りなくフィットし、沁み込んでいく。。

 


その夜、心の中にある「海の底」に、ゆっくりと沈んでいったのだった……。

 

【ティアーズ・オブ・ヘブン:YouTubeでもどうぞ】

 

◇ ◇ ◇

 

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